【X’mas Advent】1204(U.N.C.L.E:ソロとギャビー)

 

 
「ねえ、ソロ!」
とんだ食わせモノだったウェーバリー英国海軍中佐殿のおかげで、文字通り世界中を飛び回ることになったナポレオン・ソロ、イリヤ・クリヤキン、ギャビー・テラーの三人だったが、束の間の休息というか作戦待ちというか(もちろんウェーバリーの指示だ)、しばらくの間パリでの待機となった。
支度された住処はそう大きくも豪奢でもないアパルトマンだったが、少し歩けばマドレーヌ広場に出られるということもあり、ソロは十分に気に入っていた。
イリヤは居心地が悪そうで(KGBとパリというのがもう明らかに相性が悪そうだ)、ギャビーは少し様子がおかしかった。いつもニコニコしているタイプでもないが、気の強さがさせる仏頂面でもなく、気が沈んでいるように見えた。
そんなこともあり、ソロは夜のお相手を探しに行く前に、ギャビーのためにとびきりのショコラを探しに行こうと思っていたところだった。
その彼女の声はどこか悲愴に響いていたので、ソロはゆっくりと振り返りながら、眉をひょいと上げてそれに答えた。作られた完璧なスマイルは彼女には必要ない。
ギャビーは下唇を噛み、視線を上げられずにいた。言いたいこと、聞いて欲しいことがあるけれど積極的に言えるわけではない、そういう言外の声が滲み出ているような様子にソロは一つ頷いて、こう続けた。
「散歩に行こう、ギャビー。今日は空が高い」
「え、ええ……」
イリヤがこんな様子の彼女に気がつかないはずがない。しかし、自分は役に立たないと思ったのだろう。彼のいる部屋からは何の物音もしない。難しい顔をしてチェス盤を見つめているはずだ。
パリの冬の空気は重くて、冷たい。ヨーロッパなどどこも同じかもしれないが、ギャビーが過ごした街のまとわりつくような、足元を絡め取られるようなそれとは違う。
空を見上げたそこに有刺鉄線を見ることもない。
「あのね、ソロ……」
彼女の足元はかつての丈夫なだけが取り柄の行員用のブーツではなく、なめした柔らかい牛革で作られたヒールのある、キャメル色のブーツに変わった。
一生、見ることのなかった景色を見られるようになったはずの彼女が、こんな顔をする理由がすぐには思い至らず、ソロは彼女が話すのを待った。
「シュトーレンって……作れる……?」
しかし、その問いにソロは一瞬何のことを問われているのかわからず、間を置いてしまった。
「作れるだろうね」
幸いギャビーがそれに気がつく前に返事をすることが出来たが、彼女はその答えにも目線を下に向けたままだ。作ったことはないが、レシピを探すことはたやすい。それに料理に手慣れていれば、家庭料理のたぐいだろうそれに苦戦することはまずない。
ああ、そうか。
と、ソロはあたりの華やいだ空気に今更ながらに気がついた。シャンゼリゼ通りにはクリスマス市が立ち並び、ラファイエットのショーウィンドウは眩しくて目がくらむほどの飾り付けが為されている。
彼女の目にそれはどう映っていたのか、考えていなかった。
「わたしね……、義父からなんでも習ったの……」
車の修理や改造の仕方、工具の扱い、運転技術、確かにそれはソロの知るところで、生半可な技能でないこともわかっていた。
「ああ、良い先生だったんだな」
うん。
ギャビーは肩をすくめながらの曖昧な笑みを浮かべて、小さな声で続けた。
「だけど、ママからは何も……」
彼女の義父も、母親も、そして実父もすでにこの世にはいない。彼女は孤独だ。ディオールのワンピースを着ても、ランバンのトレンチコートを着ても、けしてそのことがなかったことになるわけではない。
彼女は自分やイリヤと違って、普通の少女でいられるはずだった人間だからだ。
「それなら今からマーケットに行って材料を買おう」
ドイツのクリスマスには欠かせないシュトーレンを彼女は何年、口にしていなかったのだろう。
ソロはそのことを問うかわりに、盟友のように、彼女の肩のあたりを肘でこつんと小突いた。
「生地を捏ねるのはイリヤに任せればいい」
確か、たくさんのナッツとドライフルーツ刻んで入れるはずだ。
マジパンはどうやって作るんだったかな。
「それから、とびきりのグランマニエが必要だ」
「最高」
美味しく出来ればそれを君のレシピにすればいいんだ、ギャビー。
ソロはそう言って、ギャビーの二歩ばかり前を歩き出した。
彼女が溢れる涙をハンカチに吸い込ませて、道ばたに止めてある車のサイドミラーで化粧を直すところまでは、ボスのように先を歩こう。
準備が済んだら、お姫様のエスコートをさせてもらうから。
「ソロ」
「何だい、ギャビー」
振り返ったそこにはいつもの勝ち気なギャビーが立っていた。
「ありがとう」
胸に手を当てて、感激の至り、と大仰に答えたソロは彼女の手を取り、ゆっくりとマーケットに向けて歩き出した。
「ロシアのクリスマスはどうなのかしらね?」
「サンタクロースが怖いってことぐらいしか知らないなあ」
イリヤは絶対、小さい頃、あれが怖くて泣いたはずだ。
たぶん、きっと。
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イリヤはまた今度!
ソロだけ地の文で名字にして見ました。名前は特別みたいなので。

【X’mas Advent】1201(ラムロウとロマノフ、ところによりキャップ)

 

 

 

「何も聞かないで」
エージェントロマノフは苦虫を噛みつぶしたような表情で、それだけを言い捨てた。シールド一番の美貌の持ち主とも言われているが、今の時点ではそれをすっかり台無しにしてしまっていると言える。
彼女は手に色とりどりの糸を使った、カラフルで野暮ったい、足を入れるには大きすぎる靴下を何足も持っていた。絵柄を見れば、誰が見てもそれがクリスマスに暖炉のマントルピースの前にぶら下げるためのものだとわかるが、あまりにもこの場所にはそぐわない。
ここはシールド本部トリスケリオンの一角、エージェント達の詰め所のような場所だ。その中でも最も優秀とされるストライクチーム専用のエリアともなれば、なおさら。
それをすべてわかった上で、彼女はそれをここに持って来たのだろうだろうが、やはり異質だ。機能的な施設や道具、武器が揃っているだけの部屋には靴下をぶら下げるフック一つも見当たらないのだから。
しかし、ラムロウはその靴下に興味もなければ、彼女に問いただすような気にもならなかったので、周囲の様子を伺いつつも人ごとのように装うつもりでいた。
放っておいても、彼が尋ねる。
「ロマノフ?」
ほらな、とラムロウはひそかに眉を上げた。
「何よ」
女が不機嫌にしていても構わないで疑問をそのままにしないのが、この男、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースだ。
彼はその靴下の理由というよりも、不機嫌の原因を知って対処しようと思っているのだろうが、そのまっとうさが人を苛立たせることもあることを、彼は知らないでいる。
ラムロウは姉弟のような二人のやりとりを横目に、弾倉に銃弾を込めていた。
「その靴下、どうしたんだ?」
「内勤の子達にもらったのよ。皆さんで分けてくださいってね」
ああ、もう。
言わなきゃわからない?とロマノフが恨みがましくロジャースを睨んだが、彼はあまり状況がわかっていないようだ。
「もうすぐ、クリスマスでしょ?」
これ見よがしなため息を挟んだ後、ロマノフはこう続けた。
「私達があまりに普通じゃないから、心配されてるのよ」
そこには自虐的な響きこそなかったが、寂しさは漂う。本来なら彼女が内勤の、特にバックオフィスを担当するような女性達と口を利く必要はない。
ただ、あえてロマノフはそこへ顔を出し、彼女達の名前を覚える。その理由を問うたことはないが、おそらくは、正気を保つ為だと思った。彼女達の世界は、ロマノフの知るそれよりずっと退屈ではあったが、ずっとまともだからだ。
「……そうか」
ロジャースはそう頷いて見たものの、いまいち事態を把握出来ていないのがわかる。ロマノフもそれ以上は説明するつもりはないのだろう、一足ずつですべて柄が違うらしい靴下をデスクに並べて、その内の二足を手に取った。
ラムロウはその一部始終を目の端で観察していたが、そこでついに彼女と目が合ってしまう。
「何よ」
彼女がかつていた国の風習がどうだったかなんて知らない。その靴下をどう使うかも興味はない。
「俺も、一足もらっていいか?」
ただ、脳裏にちらりと誰かの顔を思い浮かべてしまった。
「……ええ、もちろん」
少しの間が、戦いに明け暮れるだけが脳だと思われている男に対しての戸惑いと疑念を示しているが、ラムロウは構わず続けた。
「最近、猫を飼ったんだ」
そいつのおもちゃにでもするさ。
と、言ってボンボンのついたデザインの、靴下を選んだ。
「ふぅん」
「当日はご馳走でも頼むか?」
普通の人に見えるように。
そう尋ねるラムロウにロマノフはこう答えた。
「普通の人は、家族と過ごすらしいわよ」
「それはそれは」
知らなかったな。
ラムロウも肩をすくめてそう答え、猫がいるんでしょという視線には目を細めるに留めた。
その猫は、とてもとてもねぼすけで。
会えない時もあるんだ、なんて誰にも言えないのだから。
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アドベント、初めてみました。
最初はぬるめで。

ゆるゆると24日まで、色んな面子で書いて行こうと思います!

週末のお絵かき

ようやくイベント後の体調回復&お部屋のお片付けが完了したので、お絵かきしたり、録画見たり、本を読んだりして日曜を有意義に過ごしましたとさ!
明日から創作脳にギアチェンジして頑張るど!

ということで、こっちにもお絵かき載っけておきます!

まずは7/4はキャップの誕生日ってことで、お祝い絵を描いてみました!
すごいキャップが描けないマンなんですが、ほら、全然2枚とも顔違ってますね?ホンモノには似せられなくてもせめて自分の絵には寄せて行こうよ?ってつっこんでしまいましたw
ちなみにおデート絵の背景はブルックリンの写真がなかったので、丸の内です、すみません。

いつかこんな二人が見られると……見られるといいなあ;;;;

2015CABD 2015CABD-2

で、これはだいぶ加工しちゃってるんですが、色鉛筆の練習でMAD MAXよりワイブス達とフュリオサです!
全員の個性がしっかり立ってるのが、こうやって描いて見るとすっごくよくわかりますね!
いやーほんと最高でした、MAD MAX!

wives