Valentine Day’s Short-Fic

<本編見てない方、ご注意>

 

 

 

 

「あー、やっぱりカリブは最高!!」
大きく伸びをするホールデンから黙って視線を逸らしたショーンはほんの少しだけ、唇と頬に不満を乗せた。強く眩しい陽光の下、朗らかに笑う恋人の様子はけして悪いものではないのだけれど。ふとした時に考えてしまうのだ。
マリブでの暮らしに戻った方がいいのか、と。
「また一人でそんな顔して済まそうとする」
「……ん?」
ホールデンは太陽に向けていた腕をそのままショーンの方に伸ばし、まだ口元に「言えない気持ち」が漏れないように緊張感を走らせていた彼をそのままぎゅうっと抱きしめる。長い腕をもってしても持てあましてしまうほど、シーズンが終わったばかりのショーンの体は完全に出来上がっている状態だ。
未だに、ふとした瞬間に思ってしまうのだ。こんな俺が、どうして、彼のようなパーフェクトなハンサムに甘えることが許されるのだろうか、と。ショーンは自分が何人もの女性ファンに悲鳴を上げさせたことをすっかり忘れているのだ。
恋をすると、とても視野が狭くなってしまうものだから。
「今年の冬は寒すぎたってだけの話だよ?」
「……ああ、そうだな。寒すぎた」
NFLのオフシーズンは長い。今日はまだその初日に過ぎないのに、どうしてこんな態度を取ってしまったのか、と反省しつつもショーンはオウム返しにしてしまう。ホールデンはこつんと額をぶつけて、鼻先もちょこんと触れあわせた。
「オフの間は目一杯のわがままを聞くつもりで来てるんだぞ?」
青い目は悪戯っぽく笑っているようで、溢れんばかりの情熱が滲んでいる。そうだ、俺はこれを信じたんだっけな、とショーンはその当然で、かつ、大切なことを思い出してゆっくりとまばたきをした。
三回目で目をつむるから、まずはキスをもらおう。
冷えたシャンパンのルームサービスを頼むのは、それをじっくりと堪能してからだ。