Act.02
RPS-AU
アレクサンダー・スカルスガルド×テイラー・キッチュ
LAでレストランを(ゆる)経営するアレクとクラブのバウンサーのキッチュのお話。
ターザン撮影直後のお話。
アレク甘えん坊で軽めw
※LAに秘密のシェアハウスを持っているというサイコーなご都合設定。自分で言う(きっぱり)
<出来上がる前だよ>
「アレクと話してると首が痛くなるんだよなー!」
確かそんなことを言ったような気がする。その場にいたみんなが同意したし、笑いも取れた。
その場のジョークのつもりだった、の、だけれど。
うーん、と。
「……」
その瞬間からずっと彼の機嫌が目に見えて悪い。
彼は無表情になるととたんに氷のように冷たい顔になってしまうみたいなんだ。そんな顔でやっぱり上の方から見下ろされるのは良い気分がするはずもなく、俺は無意識に唇を尖らせてしまった。
「……」
機材のトラブルが出て次のシーンの撮りまでまだ少しかかる。二人のシーンを撮る前にこの雰囲気が良くないことぐらいわかっている。
でもいい年してそんなことぐらいでへそを曲げられても、と思うのだ。プロとしてどうかしている!
そんな風に毅然と立ち向かうことが出来れば、と思いかけたその時だ。
「……!」
アレクがすぐ目の前、息もかかるようなところまで顔を近づけてこちらの顔を覗き込んできたのは。
ひっ、と変な悲鳴を上げそうになったのを必死にこらえて(と、いうよりもひきつった笑顔でごまかして)、何のつもりかを問おうとした。
正直、だいぶ、怖い。
「上目使いがかわいかったから」
「へ!?」
「テイが上目使いで俺を見るのがかわいかったから」
それはいいよ、わかったから(わかりたくもないけど)。
だからそれが何で不機嫌とつながるのか、と聞き返そうとしたのにアレクはそれを許さなかった。人差し指を唇に当てて、静かに、のジェスチャーだ。
彼が小柄なメイク係やスタイリストの首を痛めさせたという話は聞いたことがないから、だいたいが、こちらをからかうために胸を張って背筋を伸ばして更に大きく見せていたのだとも思っていたりもした。
だから、あんなジョーク(のつもりだったんだ、本当に)を言ってしまったのだけれど、からかったんじゃないのか?
ええと、本気で上目使いさせるために?
わーお!
「……たまにそれを見せてくれるんなら譲歩してやってもいいぞ?」
「譲歩って……」
何を言い出したのかと思ったが、そろそろ監督も戻ってくる頃合いだ。俺はてきとうに二、三度ほど頷いて(食事をする時正面にでも座ればことは済む)、困った弟、の表情で笑って見せた。
「頼むよ、アレク」
「テイに頼まれたらしょうがない。何だってする」
食い気味の即答に、どうだか、と思いはしたが現場の遅れの原因が自分になってしまうのはごめんだったので、その言葉をとりあえず聞き流すしておくことにした。
とたんにご機嫌になった共演者に安心した俺はカメラの方を向いた。おかげですんなり演技に入れそうだ。
うん、これで良かったんだ。
た、たぶん。
「なんだ、夜中は消えるんだ……」
テイラーは残念そうに巨大なクリスマスツリーを見上げて、ぽつりと呟いた。冬のNY一番の名所になるだろう、ここロックフェラーセンター前の広場は深夜2時にもなれば、さすがに閑散としている。そういう会話を何度も見聞きしてきただろう警備員が少し離れたところで肩をすくめているのが視界に入った。
そのとおり。
俺はそのことを知っていたけれど、彼にはそう言わなかった。彼が愛してやまないアイスホッケーの試合を楽しんでいる最中にテキストを送って返事があっただけ良かった。
まあ、俺だって仲間と飲んでる時はモバイルが誰のポケットに入っているのかもわからなくなるのだし(下手すればバーテンが預かってくれている)、お互い様だ。というより、俺の方がずっとでたらめだ。
まあ、つまり。
彼は後でここで落ち合おうと言ってくれて、俺はたっぷりのコーヒーで胃と腸を洗浄する羽目になったが、この時間になって無事会えたというわけだ。
足取り軽く、ご機嫌だったテイラーの表情が少し曇ってしまったのは残念だが、もし灯りがついていたらこんな風に街を連れ立って歩くのも、難しかったろうから俺としては、現状に満足している。
表情は?
変わらないように見えるだろうが。
「もう見た?」
「いや、俺が来た時にはもう消えてたな」
髪が伸びたな、とか。
今日の試合はどっちが勝ったんだ?とか。
話題は探せば色々あるのだけれど、俺は三歩離れたところから彼の頬のあたりをじっと見つめる。一度目を合わせてから、少しだけ外して、その位置で話し続けることの多いテイラーを存分に見つめるには、この少し後ろの位置からに限るのだ。
「なあ、今度アレクも一緒にホッケーやろうぜ?」
「気が向いたらな」
「何だよ、それ」
国では男の子のスポーツと言ったらアイスホッケーだ。もちろん道具の扱いだって手慣れたもので、すぐに用意することだって出来る。
テイラーが一番大事にしている世界に誘ってくれていることを喜ぶ気持ちもある。
それなのにどうして、はっきりしない態度を取るかって?
当然だろう。
「俺は気まぐれだから」
テイラーを慕って集まっている言わば身内の中に一人放り込まれてどうしろと言うんだ。ホッケーはチームプレイだ、一人アウェイに置かれるのはごめんだからな。
まあ、そんなこと逐一説明するつもりもないけれど。
「ほんとにな!」
そんなでたらめな答えにもテイラーは気分を害することなう、くすくす笑って、今日自分が彼に送ったテキストを開いて、こちらに見せてきた。
「何だよ」
「絵文字使えたんだな?」
「妹に教わった」
「へえ!」
ウィンクとキスのマーク。
たった一つだけだ。
今夜会える?+絵文字
それでそんなに笑ってくれるのなら、毎日だって送りたいけど、その時の顔を見られるわけじゃないし。
そう、気まぐれだよ。
ジョークに見えて邪魔にならないと思ったんだよ。俺にこんなに臆病なところがあるなんて、知らないと思うけれど。
かわいいおまえの前ではクールでいたいんだよ。
ダーリン、もう少しだけこっちを向いて。
その笑顔を見せてくれよ。
「テイ?」
「ん?」
俺は少しだけ辺りを見回して、少しだけ息を止めて、こう続けた。
「俺より背が低いツリーだけど、これから一緒に飾り付けしないか?」
ティーンエイジャーが家に恋人を連れ込む時の台詞よりも酷い誘い文句だ。少なくとも、深夜に言うようなことじゃない。
しかもなんでそんな小さいツリーを用意したのか、と自分に問いたいくらいだ。
どうでも良かったんだよ、ついさっきまで。
だけど、おまえが寂しそうな顔をするからさ。
そりゃ、スワロフスキーのお星様はないけれど。
「もちろん!」
返事は想像していたのより、勢いがよくて。
テイラーは軽くその場で飛び跳ねた。
「クリスマスにはしゃぐ年でもないけどさ。あっちじゃ気分出なくて、ほら、暖かいからさ」
「雪が積もるまでいてもいいんだぞ?」
「そうしてもいいけど」
本当に?
本当に!
「……やっと笑った」
思わず頬が緩んだところで、ほっとしたようなテイラーの声。俺はどうやらクールを通りこして、不機嫌な気難し屋になっていたみたいだ。
まあ、そりゃ、多少は面白くない気持ちもあったけどな。
俺は俺が一番だと、最高にハッピーなんだし。
それは、まあ、応相談ってことで。
「貴重だろ?」
「ああ、ほんとに」
肘でこつんと小突かれて、テイラーは俺のすぐ横について歩き出した。うーん、これじゃ顔が見えないんだけどな、とこっそり様子をうかがおうとしたところ。
背伸びをしたテイラーが、頬にキスをくれた。
「!!!!」
「内緒話しているようにしか見えねえよ」
きししし、と悪戯っ子のように笑ったテイラーはそのまま、大股で歩き出した。俺はやっぱり後ろを行こうと思ったが、すぐに追い付き、見上げてくる瞳にウィンクをして見せた。
キスは、そうだな。
後で、たっぷりと。
もうたくさんだとわめかれたって、手加減はしないからな!
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夜通し点灯してるんだったら、ごめんね☆
(手元にあるガイドブックには消すって書いて会ったの)
今日きっちゅがNYにいたので書きました!
イベントで無料配布していたキッチュ受けペーパーからの再録です。
まだまだ、練習中カプですが、せっかくなのでお誕SS書きました!
前に書いたのより、アレクがまとも!
<MP24配布ペーパー:再録>