Valentine Day’s Short-Fic

<本編見てない方、ご注意>

 

 

 

 

「あー、やっぱりカリブは最高!!」
大きく伸びをするホールデンから黙って視線を逸らしたショーンはほんの少しだけ、唇と頬に不満を乗せた。強く眩しい陽光の下、朗らかに笑う恋人の様子はけして悪いものではないのだけれど。ふとした時に考えてしまうのだ。
マリブでの暮らしに戻った方がいいのか、と。
「また一人でそんな顔して済まそうとする」
「……ん?」
ホールデンは太陽に向けていた腕をそのままショーンの方に伸ばし、まだ口元に「言えない気持ち」が漏れないように緊張感を走らせていた彼をそのままぎゅうっと抱きしめる。長い腕をもってしても持てあましてしまうほど、シーズンが終わったばかりのショーンの体は完全に出来上がっている状態だ。
未だに、ふとした瞬間に思ってしまうのだ。こんな俺が、どうして、彼のようなパーフェクトなハンサムに甘えることが許されるのだろうか、と。ショーンは自分が何人もの女性ファンに悲鳴を上げさせたことをすっかり忘れているのだ。
恋をすると、とても視野が狭くなってしまうものだから。
「今年の冬は寒すぎたってだけの話だよ?」
「……ああ、そうだな。寒すぎた」
NFLのオフシーズンは長い。今日はまだその初日に過ぎないのに、どうしてこんな態度を取ってしまったのか、と反省しつつもショーンはオウム返しにしてしまう。ホールデンはこつんと額をぶつけて、鼻先もちょこんと触れあわせた。
「オフの間は目一杯のわがままを聞くつもりで来てるんだぞ?」
青い目は悪戯っぽく笑っているようで、溢れんばかりの情熱が滲んでいる。そうだ、俺はこれを信じたんだっけな、とショーンはその当然で、かつ、大切なことを思い出してゆっくりとまばたきをした。
三回目で目をつむるから、まずはキスをもらおう。
冷えたシャンパンのルームサービスを頼むのは、それをじっくりと堪能してからだ。

 

 

【X’mas Advent】1213(007:タナーとQとマネーペニー)

スペクター後日談、注意

 

 

 

 

 

「言いたくないんだけどな?」
今夜は遅くなるわ、とダーリンにテキストを入れておいて正解だったようね。われらが幕僚長もとい胃薬担当のタナーはすでにスコッチの瓶を抱え込むようにしてがぶ飲みしているし、放っておくわけにはいかないでしょ?
物わかりの良いちょっとぼんやりしたダーリンは、ちゃんとタクシーで帰ってくるんだよ、という返事をくれた。
「聞きたくないですー」
天才(なのよね、たぶん)Quartermaster、Qはスロースクイーズのスムージーを飲みながら、酔っ払いに抑揚なく合いの手を入れている。それにしても何が混ざっているのか、ひどい色。わたしは遠慮して正解ね、肌に効くって言われてもごめんだわ。
「いーや、聞いてくれ!おまえにだって責任の一端はあるんだからな!」
タナーは目下『後始末』に奔走している。国家の相当な要人が犯罪組織と手を組んで起きた今回の「事件」は解決には至ったけれど、すべてが秘密裡に済んだわけではない。
秘密にしようという努力はしてたのよ、これでも。
ただ、それが結局のところ上手くいかなくって、目下タナーは文字通り「奔走」しているのよね。当然Mが表の顔として立っているのだけれど、それ以外のことは全部タナーの取り仕切りだ。
「俺はね、ごくごく普通の秀才なの。小さい頃からたくさん本を読んで、勉強して、いい成績で大学行って、国の為に働くことはいいことだと思って入局して、頑張ってきたんだよ、わかる!?」
確かにタナーはわたしのようなエージェント志望でもなかったし(00ナンバーとはいかないけれど、今も訓練は続けてるのよ)コードネームもない。
だから彼はこっち側とあっち側(政府とか国家とかマスコミとか世間体とかそういう方ね)の架け橋的な役割を任せてしまっているんだけど、それは意味のあることだと思うのよ。
それが不満なのかしら?
「俺は俺なりに頑張ってきたし、君らのような特別枠ともそれなりに上手くやってるさ」
わたしは冷たいお水を持ってくるようにバーテンに合図を送った後、タナーの肩をそっとさする。
なるほどね。
「でもな……!」
彼が何に対して憤っているのか、わたしにはようやくわかった。Qもきっとなんとなくわかっているから、こうしてそこに座ってるんでしょうね。
「でも俺は、ふつうの人間なんだよ……」
うん、そうね。
「だから、勝手に人生を終わらせようとしたりするヤツの気持ちはわからないし、一人で何でも解決しようとする人の気持ちもわからないんだよ」
それから、自分が死んだ時のことを想定してメッセージを残す人の気持ちも。
「クリスマスカードを……書いてたんだ……」
Qは猫の写真をそっとタナーの手の横に置いて、見せる。何やってるのよ、と思ったけど、タナーは眉を下げて泣きそうな顔で笑って、かわいいな、と呟いた。
「こんなに忙しいのに……、損害を試算して、苦情をとりまとめて、Cに解雇されたダブルオーセクションの人間を集めて、再建の計画を立てて……」
死ぬほど忙しいのに、徹夜してでも、
「クリスマスカードはちゃんと書かないと、と思って……」
タナーはそこまでを言って、Qの猫を画面越しに撫でた。わたしはもう一度、肩をさすって、お酒を取り上げた。指は氷のように冷たくて、震えいていた。
「ジェイが今……どこにいるのかも知らないのに……。Mにクリスマスの話を振ることもできないのに……」
クリスマスカードに、何て書いたと思う?
「来年は、きっと良いことがあるって書いたんだ。俺はふつうの人間だから、命を賭けることも、盾になることもできないから……無責任に楽しいことを願うんだ」
わたしはタナーの声に、目をぎゅっと閉じた。気の利いた言葉一つ、探せなくて情けないわね。
「きっと良いことがあるって……何なんだよな……、ほんと……俺って……」
バカだな。
ぽつりと呟いた声は掠れていたけれど、胸の奥に染みる。目を開いたら涙が溢れてしまいそうで、怖いのよ。それでも、あなたはバカなんかじゃないって伝えないとね。
そう思ってわたしが目を開けた、そのタイミングでウェイターがこちらに近づいてくるのが見えた。
わたしは少しだけ緊張して、タナーはうなだれていて、Qは携帯で別の猫の写真を探していた。口下手ってこういう時困るわよね、わかるわ。
「お客様、あの、こちらを……」
そこに置いてあったのは、こんな街ハズレのパブとはあまり相性の良くないように見える、ショッキングピンクの箱に金の箔押し、プレスタのトリュフチョコレート。
よりにもよって、チョコレート!
「……ジェイ……」
顔を上げたタナーは困り顔のウェイターから箱を受け取ると、添えられたカードを見て舌打ちをする。
「何って書いてありました?」
Qもわたしも彼の置き土産やプレゼントをもらったことはあるから、またタナーが厄介事を増やされたのかと心配になったけれど、タナーはQの言葉に肩をすくめて、こう言った。
「食べ過ぎ注意だと」
「え、それだけ?」
「それだけ」
タナーはゆるく頭を振ると、箱に手をかけた。そしてトリュフを一粒手にとって、口の中に放り込む。
「美味しいわよね」
「ああ、美味い」
僕にも下さい、と言ってQが手を伸ばしたので、わたしもご相伴にあずかることにして、横目でちらりとタナーの様子を伺った。先ほどよりも落ち着いて見えたし、顔色も良くなっているような気がする。
大丈夫なのかしら。
「悪かったな、愚痴につきあわせて」
「いいのよ」
「猫、触りにきてもいいですよ」
ありがとう、とタナーは口の端で笑って、深い息をついた。もう一つ、とトリュフをつまんで、肩をすくめる。
「……二人には別のことを書いたからな」
「楽しみにしてるわ」
「お説教じゃないといいんですけど」
さて、どうかなと笑って、タナーは水を一気に飲み干した。抱えてた瓶は床の上、足で引っかけないようにね。
「ねえ、せっかくだからもう少しおしゃべりして行かない?」
二人が頷いたら、ここからはあの勝手な男の悪口大会をはじめましょう?
きっとどこかで大きなくしゃみをしてるわよ。
お仕置きには、甘いと思うけどね!

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当方タナマロですが、タナー大好きマンなのでこんなお話に!
マロリーは後でよしよししてくれるよ!きっと!

【X’mas Advent】1207(RPS-AU:Viggo/Sean)

“Let’s dig in” Ver.
三枚ほどの便せんに書き付けた文字を彼は何往復見返したのだろう。
「なあ、ヴィゴ……?」
ショーンがそれを彼に手渡してからすでに二十分は経っていると思う。その間、ショーンはカモミールティーとヴィゴの分のコーヒーを入れることが出来たし、軽く上半身のストレッチも済んだ。
さて。
どうしたものか。
「んー……ん、ん、ん……」
頭の良く、機転もきくヴィゴが眉間に皺を寄せて、唇を引き結んで(さらに、左側にぎゅっと力を入れている)難しい顔をしなければいけないほど、難解なことを書いたわけではない。
ブログに載せているような程度の文章で、二週間後のクリスマスパーティーのために考えたメニューが書いてあるだけだ。
オーソドックスなのと、少しコンテンポラリーなのと、もう一つはデザートだけのメニューリストだ。我ながらよく出来ていると思うのだけれど、ヴィゴはずっとこの調子だ。
「ヴィゴ」
腹が立つというわけではないけれど、毎日美味しい、美味しいとあれだけ言ってくれているのにどうして渋面なのかがさっぱりわからないのだ。理由があるのなら、言ってくれれば対応はできる。
黙っているつもりなら、こっちにも考えがあるぞ?
伊達に何年もトラベルメーカーをやってきていない。
腕っ節には自信があるんだ。
「……その、パーティーの時の食事なんだが……ケータリングに頼むはどうかなって……思ったんだ……」
こっちが下を向こうが、背中を見せようが、じーっと熱い視線を送ってくるくせに今日に限っては視線を逸らしたまま顔を上げようともしない。
「ふぅん……?」
フィンガーフードの種類が足りないと言うのなら、あと四品はすぐ考えつくし、とろとろのツナだって市場に必ず仕入れてくれるように脅しをかけてある。
生ハムだってこの間ありったけの試食をして一本選んだんだぞ?
羊のグリルが嫌なら、鴨にしよう。
さあ、どうだ!
と、まあ、言いたいことを全部飲み込んで一言、相づちだけを返したショーンにヴィゴはようやくはっとなって顔を上げた。
「ち、違う!そういう意味じゃないんだ!」
「そういう意味って?」
「あ、いや……その……」
そんな低い声聞いたことがない!と涙目になるぐらいなら、何だっておかしな態度を取るのだろう。ショーンは胸の前で腕を組んで、ヴィゴの顔をじっと見つめる。
半分ぐらい目を細めているから、睨んでいるように見えるかも知れないが、それもこちらの計画通りだ。
さて。
言い訳は好きではないが、どうやって申し開きをするつもりなのか、聞いてやろうという気持ちでショーンは顎をくいっと上げて、ヴィゴを促した。
「初めてのクリスマス……だろ?」
その、俺達、二人のさ。
そう続けたヴィゴにショーンは、二度ほど頷いた。何を当たり前のことを言っているのだろうか?と首をかしげたくなったが何とかこらえた。
「で……、その、クリスマスディナーの時に作って欲しいというか……」
ヴィゴは言葉を扱う仕事に就いているとは思えないぐらい拙い言い訳をぼそぼそと口にして、世界で一番ショーンの作る飯は美味いってわかってるけど、と消え入るような声で呟いた。
「何言ってるんだ、一番はママだろ」
「うー……」
さて、頭の中身がゆるいと言われる俺でもこのケースは理解出来たと思う。
「おまえがホストのパーティーなんだ、作らせてくれよ」
それで彼の仕事が円滑に進むのならば、パートナーとして腕を振るう価値があると思う。もちろん、報酬も頂くつもりだから、これはプロとプロの契約だ。
いいか?
わかったなら次に進むぞ?
「で、クリスマスの夜は……おまえのためだけに作る」
二人の食事にカナッペがいるか?
答えはノーだ。ターキーは先月で勘弁だから、ローストビーフにしよう。ゆっくりとワインを飲みながら、。おしゃべりをして、体が温まるような食事のためのご馳走にするよ。
スープだって気取ったコンソメより、具だくさんなチャウダーが好きだろう?
「……くだらないことを言ってごめん……」
「わかってるならいいさ」
ショーンは優しいな、と呟いたヴィゴはがっくり肩を落として小さくなってしまった。今更ながら自分の狭量に気づき落ち込んでいるのだろう。
ショーンとしてはこんな些細なことでも彼の愛情の強さを知ることが出来るのは悪くないとは思っているが、そうだな、二十分は悩み過ぎだ。少し拗ねたら、後は任せてくれないと。
「で、どっちにする?」
「……会場がギャラリーだからな。コンテンポラリーで!」
試験管料理ほど前衛でもないけれど、面白い料理をスペイン人の料理人に教わったから、それを応用出来たらいいと思っている。メニュー自体は気に入っていただけたようで、顔がだんだん気むずかし屋のそれから、美味しそうだな、と想像する顔になっている。
「……ん?」
「俺は……その顔が楽しみでヴィゴに美味しいものを作ってるんだ」
ヴィゴは顔?と眉を上げて見せたが、すぐに耳の方まで顔を赤くして、照れ出す。
あまり甘やかすのは良くないとシャーリーズは言ったりするのだけれど、これも一つの楽しみではあるんだ。
「今晩のメニューは何だと思う?」
ヴィゴは照れを隠すように髪をかきあげ、俺の好きなもの?と気取って見せるが、嬉しそうに頬が緩んでいるから台無しだ。
「ビーツサラダ、ポテトパンケーキ……」
それから、
「にせものウサギ!」
定番のデンマーク料理の三品にヴィゴの表情はぱっと明るくなった。合い挽き肉で作るシンプルなミートローフもそうやって呼べば、何だかとても楽しげに聞こえる。
子供の頃、よく食べていたのだと笑うヴィゴにもう嫉妬の色はない。
ショーンはほっとした気持ちを顔には出さず、よしよしと彼の頭を撫でてやることで、伝えることにした。
ごめん、はいらないぞ。
だから、ハッピーなクリスマスを楽しもう。
「パーティーまでが大変なんだからな」
「まったくだ」
プレゼントリストを埋めるため、週末はメイシーズを駆けずり回ろう。それもまた、二人で過ごすクリスマスの一部さ。
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デンマークと言えばブタ料理らしいだよね。
食べたい、食べたい!

【X’mas Advent】1204(U.N.C.L.E:ソロとギャビー)

 

 
「ねえ、ソロ!」
とんだ食わせモノだったウェーバリー英国海軍中佐殿のおかげで、文字通り世界中を飛び回ることになったナポレオン・ソロ、イリヤ・クリヤキン、ギャビー・テラーの三人だったが、束の間の休息というか作戦待ちというか(もちろんウェーバリーの指示だ)、しばらくの間パリでの待機となった。
支度された住処はそう大きくも豪奢でもないアパルトマンだったが、少し歩けばマドレーヌ広場に出られるということもあり、ソロは十分に気に入っていた。
イリヤは居心地が悪そうで(KGBとパリというのがもう明らかに相性が悪そうだ)、ギャビーは少し様子がおかしかった。いつもニコニコしているタイプでもないが、気の強さがさせる仏頂面でもなく、気が沈んでいるように見えた。
そんなこともあり、ソロは夜のお相手を探しに行く前に、ギャビーのためにとびきりのショコラを探しに行こうと思っていたところだった。
その彼女の声はどこか悲愴に響いていたので、ソロはゆっくりと振り返りながら、眉をひょいと上げてそれに答えた。作られた完璧なスマイルは彼女には必要ない。
ギャビーは下唇を噛み、視線を上げられずにいた。言いたいこと、聞いて欲しいことがあるけれど積極的に言えるわけではない、そういう言外の声が滲み出ているような様子にソロは一つ頷いて、こう続けた。
「散歩に行こう、ギャビー。今日は空が高い」
「え、ええ……」
イリヤがこんな様子の彼女に気がつかないはずがない。しかし、自分は役に立たないと思ったのだろう。彼のいる部屋からは何の物音もしない。難しい顔をしてチェス盤を見つめているはずだ。
パリの冬の空気は重くて、冷たい。ヨーロッパなどどこも同じかもしれないが、ギャビーが過ごした街のまとわりつくような、足元を絡め取られるようなそれとは違う。
空を見上げたそこに有刺鉄線を見ることもない。
「あのね、ソロ……」
彼女の足元はかつての丈夫なだけが取り柄の行員用のブーツではなく、なめした柔らかい牛革で作られたヒールのある、キャメル色のブーツに変わった。
一生、見ることのなかった景色を見られるようになったはずの彼女が、こんな顔をする理由がすぐには思い至らず、ソロは彼女が話すのを待った。
「シュトーレンって……作れる……?」
しかし、その問いにソロは一瞬何のことを問われているのかわからず、間を置いてしまった。
「作れるだろうね」
幸いギャビーがそれに気がつく前に返事をすることが出来たが、彼女はその答えにも目線を下に向けたままだ。作ったことはないが、レシピを探すことはたやすい。それに料理に手慣れていれば、家庭料理のたぐいだろうそれに苦戦することはまずない。
ああ、そうか。
と、ソロはあたりの華やいだ空気に今更ながらに気がついた。シャンゼリゼ通りにはクリスマス市が立ち並び、ラファイエットのショーウィンドウは眩しくて目がくらむほどの飾り付けが為されている。
彼女の目にそれはどう映っていたのか、考えていなかった。
「わたしね……、義父からなんでも習ったの……」
車の修理や改造の仕方、工具の扱い、運転技術、確かにそれはソロの知るところで、生半可な技能でないこともわかっていた。
「ああ、良い先生だったんだな」
うん。
ギャビーは肩をすくめながらの曖昧な笑みを浮かべて、小さな声で続けた。
「だけど、ママからは何も……」
彼女の義父も、母親も、そして実父もすでにこの世にはいない。彼女は孤独だ。ディオールのワンピースを着ても、ランバンのトレンチコートを着ても、けしてそのことがなかったことになるわけではない。
彼女は自分やイリヤと違って、普通の少女でいられるはずだった人間だからだ。
「それなら今からマーケットに行って材料を買おう」
ドイツのクリスマスには欠かせないシュトーレンを彼女は何年、口にしていなかったのだろう。
ソロはそのことを問うかわりに、盟友のように、彼女の肩のあたりを肘でこつんと小突いた。
「生地を捏ねるのはイリヤに任せればいい」
確か、たくさんのナッツとドライフルーツ刻んで入れるはずだ。
マジパンはどうやって作るんだったかな。
「それから、とびきりのグランマニエが必要だ」
「最高」
美味しく出来ればそれを君のレシピにすればいいんだ、ギャビー。
ソロはそう言って、ギャビーの二歩ばかり前を歩き出した。
彼女が溢れる涙をハンカチに吸い込ませて、道ばたに止めてある車のサイドミラーで化粧を直すところまでは、ボスのように先を歩こう。
準備が済んだら、お姫様のエスコートをさせてもらうから。
「ソロ」
「何だい、ギャビー」
振り返ったそこにはいつもの勝ち気なギャビーが立っていた。
「ありがとう」
胸に手を当てて、感激の至り、と大仰に答えたソロは彼女の手を取り、ゆっくりとマーケットに向けて歩き出した。
「ロシアのクリスマスはどうなのかしらね?」
「サンタクロースが怖いってことぐらいしか知らないなあ」
イリヤは絶対、小さい頃、あれが怖くて泣いたはずだ。
たぶん、きっと。
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イリヤはまた今度!
ソロだけ地の文で名字にして見ました。名前は特別みたいなので。

【X’mas Advent】1203(RPS:Alexander.S/T.Kitsch)

「なんだ、夜中は消えるんだ……」
テイラーは残念そうに巨大なクリスマスツリーを見上げて、ぽつりと呟いた。冬のNY一番の名所になるだろう、ここロックフェラーセンター前の広場は深夜2時にもなれば、さすがに閑散としている。そういう会話を何度も見聞きしてきただろう警備員が少し離れたところで肩をすくめているのが視界に入った。
そのとおり。
俺はそのことを知っていたけれど、彼にはそう言わなかった。彼が愛してやまないアイスホッケーの試合を楽しんでいる最中にテキストを送って返事があっただけ良かった。
まあ、俺だって仲間と飲んでる時はモバイルが誰のポケットに入っているのかもわからなくなるのだし(下手すればバーテンが預かってくれている)、お互い様だ。というより、俺の方がずっとでたらめだ。
まあ、つまり。
彼は後でここで落ち合おうと言ってくれて、俺はたっぷりのコーヒーで胃と腸を洗浄する羽目になったが、この時間になって無事会えたというわけだ。
足取り軽く、ご機嫌だったテイラーの表情が少し曇ってしまったのは残念だが、もし灯りがついていたらこんな風に街を連れ立って歩くのも、難しかったろうから俺としては、現状に満足している。
表情は?
変わらないように見えるだろうが。
「もう見た?」
「いや、俺が来た時にはもう消えてたな」
髪が伸びたな、とか。
今日の試合はどっちが勝ったんだ?とか。
話題は探せば色々あるのだけれど、俺は三歩離れたところから彼の頬のあたりをじっと見つめる。一度目を合わせてから、少しだけ外して、その位置で話し続けることの多いテイラーを存分に見つめるには、この少し後ろの位置からに限るのだ。
「なあ、今度アレクも一緒にホッケーやろうぜ?」
「気が向いたらな」
「何だよ、それ」
国では男の子のスポーツと言ったらアイスホッケーだ。もちろん道具の扱いだって手慣れたもので、すぐに用意することだって出来る。
テイラーが一番大事にしている世界に誘ってくれていることを喜ぶ気持ちもある。
それなのにどうして、はっきりしない態度を取るかって?
当然だろう。
「俺は気まぐれだから」
テイラーを慕って集まっている言わば身内の中に一人放り込まれてどうしろと言うんだ。ホッケーはチームプレイだ、一人アウェイに置かれるのはごめんだからな。
まあ、そんなこと逐一説明するつもりもないけれど。
「ほんとにな!」
そんなでたらめな答えにもテイラーは気分を害することなう、くすくす笑って、今日自分が彼に送ったテキストを開いて、こちらに見せてきた。
「何だよ」
「絵文字使えたんだな?」
「妹に教わった」
「へえ!」
ウィンクとキスのマーク。
たった一つだけだ。

今夜会える?+絵文字

それでそんなに笑ってくれるのなら、毎日だって送りたいけど、その時の顔を見られるわけじゃないし。
そう、気まぐれだよ。
ジョークに見えて邪魔にならないと思ったんだよ。俺にこんなに臆病なところがあるなんて、知らないと思うけれど。
かわいいおまえの前ではクールでいたいんだよ。
ダーリン、もう少しだけこっちを向いて。
その笑顔を見せてくれよ。
「テイ?」
「ん?」
俺は少しだけ辺りを見回して、少しだけ息を止めて、こう続けた。
「俺より背が低いツリーだけど、これから一緒に飾り付けしないか?」
ティーンエイジャーが家に恋人を連れ込む時の台詞よりも酷い誘い文句だ。少なくとも、深夜に言うようなことじゃない。
しかもなんでそんな小さいツリーを用意したのか、と自分に問いたいくらいだ。
どうでも良かったんだよ、ついさっきまで。
だけど、おまえが寂しそうな顔をするからさ。
そりゃ、スワロフスキーのお星様はないけれど。
「もちろん!」
返事は想像していたのより、勢いがよくて。
テイラーは軽くその場で飛び跳ねた。
「クリスマスにはしゃぐ年でもないけどさ。あっちじゃ気分出なくて、ほら、暖かいからさ」
「雪が積もるまでいてもいいんだぞ?」
「そうしてもいいけど」
本当に?
本当に!
「……やっと笑った」
思わず頬が緩んだところで、ほっとしたようなテイラーの声。俺はどうやらクールを通りこして、不機嫌な気難し屋になっていたみたいだ。
まあ、そりゃ、多少は面白くない気持ちもあったけどな。
俺は俺が一番だと、最高にハッピーなんだし。
それは、まあ、応相談ってことで。
「貴重だろ?」
「ああ、ほんとに」
肘でこつんと小突かれて、テイラーは俺のすぐ横について歩き出した。うーん、これじゃ顔が見えないんだけどな、とこっそり様子をうかがおうとしたところ。
背伸びをしたテイラーが、頬にキスをくれた。
「!!!!」
「内緒話しているようにしか見えねえよ」
きししし、と悪戯っ子のように笑ったテイラーはそのまま、大股で歩き出した。俺はやっぱり後ろを行こうと思ったが、すぐに追い付き、見上げてくる瞳にウィンクをして見せた。
キスは、そうだな。
後で、たっぷりと。
もうたくさんだとわめかれたって、手加減はしないからな!

—————————————–
夜通し点灯してるんだったら、ごめんね☆
(手元にあるガイドブックには消すって書いて会ったの)

今日きっちゅがNYにいたので書きました!

【X’mas Advent】1202(RPS-AU:Evanstan)

 

 

セバスチャンがこの町外れにある少し寂れた教会に神父として着任してから、そろそろ半年になる。
鉛色の空から雪がちらつきはじめ、ここで過ごす初めての冬が来たことを知らせてくれる。セバスチャン自身は寒さには強い方ではあったが、ただでさえあまり人がいない教区だ。雪が積もってはクリスマスのミサに来てくれる人も少なくなりそうで、今のうちに雪かきに必要な道具を揃えておこうかな、とぼんやりと考えていたところだった。
一人の青年がにぎやかにやって来たのは。
「ええと……」
彼は年の頃は自分と同じ、三十歳になるかならないか、そのぐらい。もしかしたら少し下かも知れないけれど、今までセバスチャンが関わったことのないタイプの青年だった。
うるさいぐらいに大きなジェスチャー、くるくるとよく動く表情、時折何を言ってるのかわからなくなるご機嫌なおしゃべり、ぱっとあたりが明るくなるような笑顔を振りまく彼の名はクリス・エヴァンスと言うのだそうだ。
名刺も何もない、ただ彼がそう名乗っただけなので、セバスチャンは小さく口の中で反芻しながら、言葉を継ぐ。
「ええと、ミスターエヴァンス?」
「クリスでいいよ、神父さん」
彼を今までミサでは見たことはない。でも見覚えがないわけではなかった。そのことについて話をしたいのに、彼の落ち着かないハイテンションがセバスチャンにそれを許さなかった。
元よりおっとりしてる自覚のあるセバスチャンは、うんうん、と相槌をどうにか入れながら隙を伺うしかないのだけれど、本当にこういうのをマシンガントークなんだな、と感心してしまうぐらいの勢いなのだ。
「もうずっと神父さんに会いたくて!昨日の夜なんか楽しみすぎて眠れなかったから、めっちゃ寝不足!ヤバい!だけど、そろそろ十二月入っちゃったし善は急げっていうだろ?だから、勇気を出して来たってわけ!あ、なんか用事とかあったら言ってくれよ?俺いい子にして待ってるからさ!」
クリス……、ちょっと待ってとようやく言いかけたのだが、
「ひゃー!神父さんの声、すごくいいね!ね、ね、もう一回呼んで?めっちゃテンション上がる!」
この調子だから、一向に用件が進まない。
はあ……と、わかりやすいため息をつきたいところだけれど、それもできない。あまりに楽しそうで(時折その場で飛び跳ねたりする)それを邪険にするのはかわいそうな気がしたのだ。
たとえ、彼がここ数日の間、何度も教会の裏手にある森の中をウロウロと歩き回っていて、それをセバスチャンが警戒していたとしても。
ここまで邪気がないと、警察に通報しようと思っていたことを伝えるタイミングを探してしまう。しかし、教区と教会を守る任にある自分が見逃すわけにもいかない。
「クリス?」
もう一度、今度は少し喉を張ってその名を呼ぶと、彼の笑顔はだらしないぐらいにふにゃりと崩れた。それどころか耳までを真っ赤に染めて、じたばたとその場で足踏みだ。
うーん、どうしよう。
セバスチャンは迷いながらも、どうにか先を続けることにした。
「君、最近よく……裏の森に来てるよね?教会は常に君に門を開くけれど……」
森は一応教会所有の土地で、という考えていたセリフは立ち消えてしまった。
「神父さん!気づいてくれたんだ!」
思い切り、強い力で抱きしめられてしまったから。
薄暗い教会で日々を過ごす自分と違ってクリスはなんらかのスポーツをやっているのか、長い手足に十分すぎるほどの筋力をつけているらしい。それは息が止まるほどの強さだった。
「自己紹介してからの方がいいとは思ったんだけど、先に見ておきたくてさ。ね、ね、俺の顔とかもう覚えてくれてるの?街でばったり会ったらわかるぐらい?」
何を見ておきたかったのかもわからないし、彼の問いかけは矢継ぎ早すぎて、口を挟めない。
ああ、こういう時はどうしたらいいのですか?これがもし告解だったら、もう一度言わせるわけにも行かない。何とか理解しなければ。
「一本、いいのを見つけたんだよ、神父さん!」
ついに。
どうしようもなく勢い込んだクリスは音を立ててセバスチャンの頬にキスをする。それは父親が子供にするような、はたまた逆のような、そういう類いのキスだったけれどセバスチャンは驚いて、思い切り目の前の青年を突き飛ばしてしまった。
なんてことだ、暴力なんて!
「……っ」
思わず両手で口元を覆ってしまったセバスチャンに、クリスの目が大きく見開かれた。どうやら彼の目にはひどく怯えている様に見えてしまったらしい。
「ご、ごめんなさい、神父さん!俺は……俺は……!」
彼は勢いよくその場で膝をつき(痛いだろうに)、それこそ大仰な演出の映画で神に許しを請う信徒のような格好で、手を組み、そこからこちらを見上げた。
きれいな目の色だな、とセバスチャンは思った。
薄暗い中でもそれが鮮やかな青色だと見てとれたし、反省のせいなのかすっかり潤んでしまっているものだから、燭台の灯りにゆらゆら揺れて見えた。
くーん、と情けない鳴き声が聞こえてきそうなその様子にセバスチャンは小さく笑って、そっと手を差し出した。
彼が森に潜む悪党ならとっくにことを起こしているだろうとの判断もあったが(ほとんど自分はひとりきりでここにいるので)、何よりこの人懐こい大型犬のような青年が、悪い男、には見えなかったからだ。
「こちらこそ、突き飛ばしたりして……」
「そんな!俺が悪いんだ、あと、その……何かトラウマとかあったりしたのかなって……こないだそういう映画見て、その悪い神父さんが……」
イージーイージー、なんてこと言い出すんだ君は!
まあ、そういう話はこの世界でゼロではないけど、とセバスチャンは呆れ半分、憎めなさ半分でクリスの手をぎゅっと握って、大丈夫だから、と囁くように言った。
それから、今日は人の話は最後までゆっくり聞くものだということを覚えて帰って欲しい。
ひっく、としゃっくりを飲み込んだようになったクリスはパチパチと瞬きを繰り返し、ややあって、良かった!と安堵の笑みを浮かべる。
「心配をありがとう」
「当然だよ。だって神父さん、めっちゃかわいいから俺ずっと心配してたんだ。森に用事があったんだけどさ、あんたの護衛もできたらなっていつも思ってたんだ、どうかな?何なら住み込みでもって、ハハハ、気が早いかな?だよなー!」
「クリス!」
もうらちがあかない!とセバスチャンは覚悟を決めて少し多きな声で彼を制した。
きょとんとした顔でそれに答えたクリスだったが、くじけずセバスチャンは彼の顔の前に一本指を立てた状態で宣告した。
「言いたいことは一つずつ、わかりやすく、順番に話すこと!ちゃんと最後まで聞くから」
涙ながらに告解する信徒だってもう少し筋立てて話すことができる、とセバスチャンはついに一つため息をこぼした。
それにクリスは少しは反省したのか、口を閉じたまま深く頷いて見せた。
「……なるほど」
それから十分ぐらいかけて彼の話を聞いたことには、だ。
彼はここから車で三十分ほど離れたところにある児童養護施設でボランティアをしているのだと言う。スポーツの指導から備品の修繕まで、やれることは多いとのこと。
そこで何度かお祈りに来ているセバスチャンを見たことがあるということ。
いつか会って話をしてみたかったということ。
それからクリスマスが近いから街一番で大きなクリスマスツリーの飾り付けを子供達と一緒にやってみたいと思ったこと、などを話してくれた。脱線しそうになるのをどうにかこうにか制しつつではあったが、ようやく彼の行動の意味がわかってきた。
つまり、彼はこの教会の裏で適当な大きさのツリーを探していて、この思い付きにセバスチャンを巻き込もうとした、というわけだ。
「飾り付けからやりたいんだよ。ほら、みんなでワイワイやると楽しいだろう?」
「そうだね」
「じゃ、じゃあ、良い?一緒にやってくれるだろ?」
セバスチャンはもう降参、とばかりに両の手を目の高さぐらいまで上げてクリスに手の平を見せた。
「でも、ここの木は倒せないよ?」
「このままでやるんだよ!電飾もつけてさ、華やかにしよう!そうしたら教会のミサにも人が増えるかも知れないし」
何でもお見通しなんだな、と軽くにらんで見せても、全く悪びれないクリスにセバスチャンも納得するしかなかった。グリズリーが出たらどうする?なんていう脅しを言っても仕方がない。
「なあ、俺に任せてくれたら最高のクリスマスにしてあげるから!」
「子供達にとって良いものであれば」
「もちろん!」
「せっかくだから炊き出しもしようかな」
クリスはそのアイデアには飛び上がって同意して、天才の称号を授けてくれた。
まあ、こういう友人が一人ぐらいいてもいいのかもしれない。
セバスチャンはそんなことを考えながら、こう続けた。
「早速だけど、ホームセンターまで車出してくれる?」
「おおせの通りに!」
クリスはその場でまたも大きく飛び上がると、こらえきれないとばかりにそのまま表まで飛び出して行った。
雄叫びのような声が聞こえるが、セバスチャンは深く考えないようにして、誰もいない教会の中をぐるりと見回した。
それから、しーっと唇に指を当てて「秘密」のポーズだ。
「よろしく、ミスター・エヴァンス」
これからもよろしく。

雪が積もったら一番に来てくれると嬉しいな。

――――――――――――――
早速長くなってるど……

【X’mas Advent】1201(ラムロウとロマノフ、ところによりキャップ)

 

 

 

「何も聞かないで」
エージェントロマノフは苦虫を噛みつぶしたような表情で、それだけを言い捨てた。シールド一番の美貌の持ち主とも言われているが、今の時点ではそれをすっかり台無しにしてしまっていると言える。
彼女は手に色とりどりの糸を使った、カラフルで野暮ったい、足を入れるには大きすぎる靴下を何足も持っていた。絵柄を見れば、誰が見てもそれがクリスマスに暖炉のマントルピースの前にぶら下げるためのものだとわかるが、あまりにもこの場所にはそぐわない。
ここはシールド本部トリスケリオンの一角、エージェント達の詰め所のような場所だ。その中でも最も優秀とされるストライクチーム専用のエリアともなれば、なおさら。
それをすべてわかった上で、彼女はそれをここに持って来たのだろうだろうが、やはり異質だ。機能的な施設や道具、武器が揃っているだけの部屋には靴下をぶら下げるフック一つも見当たらないのだから。
しかし、ラムロウはその靴下に興味もなければ、彼女に問いただすような気にもならなかったので、周囲の様子を伺いつつも人ごとのように装うつもりでいた。
放っておいても、彼が尋ねる。
「ロマノフ?」
ほらな、とラムロウはひそかに眉を上げた。
「何よ」
女が不機嫌にしていても構わないで疑問をそのままにしないのが、この男、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースだ。
彼はその靴下の理由というよりも、不機嫌の原因を知って対処しようと思っているのだろうが、そのまっとうさが人を苛立たせることもあることを、彼は知らないでいる。
ラムロウは姉弟のような二人のやりとりを横目に、弾倉に銃弾を込めていた。
「その靴下、どうしたんだ?」
「内勤の子達にもらったのよ。皆さんで分けてくださいってね」
ああ、もう。
言わなきゃわからない?とロマノフが恨みがましくロジャースを睨んだが、彼はあまり状況がわかっていないようだ。
「もうすぐ、クリスマスでしょ?」
これ見よがしなため息を挟んだ後、ロマノフはこう続けた。
「私達があまりに普通じゃないから、心配されてるのよ」
そこには自虐的な響きこそなかったが、寂しさは漂う。本来なら彼女が内勤の、特にバックオフィスを担当するような女性達と口を利く必要はない。
ただ、あえてロマノフはそこへ顔を出し、彼女達の名前を覚える。その理由を問うたことはないが、おそらくは、正気を保つ為だと思った。彼女達の世界は、ロマノフの知るそれよりずっと退屈ではあったが、ずっとまともだからだ。
「……そうか」
ロジャースはそう頷いて見たものの、いまいち事態を把握出来ていないのがわかる。ロマノフもそれ以上は説明するつもりはないのだろう、一足ずつですべて柄が違うらしい靴下をデスクに並べて、その内の二足を手に取った。
ラムロウはその一部始終を目の端で観察していたが、そこでついに彼女と目が合ってしまう。
「何よ」
彼女がかつていた国の風習がどうだったかなんて知らない。その靴下をどう使うかも興味はない。
「俺も、一足もらっていいか?」
ただ、脳裏にちらりと誰かの顔を思い浮かべてしまった。
「……ええ、もちろん」
少しの間が、戦いに明け暮れるだけが脳だと思われている男に対しての戸惑いと疑念を示しているが、ラムロウは構わず続けた。
「最近、猫を飼ったんだ」
そいつのおもちゃにでもするさ。
と、言ってボンボンのついたデザインの、靴下を選んだ。
「ふぅん」
「当日はご馳走でも頼むか?」
普通の人に見えるように。
そう尋ねるラムロウにロマノフはこう答えた。
「普通の人は、家族と過ごすらしいわよ」
「それはそれは」
知らなかったな。
ラムロウも肩をすくめてそう答え、猫がいるんでしょという視線には目を細めるに留めた。
その猫は、とてもとてもねぼすけで。
会えない時もあるんだ、なんて誰にも言えないのだから。
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アドベント、初めてみました。
最初はぬるめで。

ゆるゆると24日まで、色んな面子で書いて行こうと思います!

【Review】The Man From U.N.C.L.E

ネタバレ全開です。
あと、どうかしてるので読み流してください!

 

この映画を最初に見た時、ただただ多幸感に包まれて、ニコニコしたまま映画が終わってしまいました。お話とかそういうのとかを説明することもできず、だいたいこれが映画としてどうなのか?とかも全然わかりません。
ただ、ただ、オープニングで遠くからベースの音が聞こえてきて、その後黒字の背景に赤のワーナー印が出てきた瞬間に、私の中で1万点が出ちゃったんです……w
次から次へと繰り出される大好きなカット割り、音楽に次ぐ音楽に、わーー最高だーーー!ってアドレナリン全開になってしまったですよ……

ああ、これは、ディスコだ!!!!!!!

(注)真弓はディスコにもクラブにも行ったことなどありません。

それはさておき。元より私はガイ・リッチー作品に寛容すぎるので、どんなのが来てもうんうん頑張ったよね!こうしたかったんだよね!ってなっちゃうので何の参考にもならなければ、正気でもないです。
伏線の巻き戻し確認も、あからさまな「これが行動原理だよ」「あ、ここテストに出るよ?」ってわからせてくれるわざとらしいズームアップも画面分割も、大好きで仕方がないんです。
ゆえに、大歓喜です。
そこへ加えて、クラッシック時代のドラマの俳優さんみたいなしゃべり方をみんなで徹底してるんですもの。レトロ好きにはたまらないですよ、どんなご褒美かと!
ハレルヤ-!

で、ナポソロのリメイクと聞いてそりゃあもう楽しみでした。旧作も大好きですしって。ただ、イリヤのキャスティング聞いた時にキャラは変えてくるんだろうなとは覚悟してました。
ですが、こう来るとは思ってなかったので、よしこれは別モノとしてがっつり楽しむぞ!っていう準備も出来たので良かったです。あっちのイリヤもこっちのイリヤも、もちろんどっちのソロもそれぞれ良いところ満載で、どちらも割れ鍋に綴じ蓋な感じで、たまりません♪

あ、レビューって銘打ったからには物語のことにも触れないとな……。うーん(果たして私はちゃんと映画として見ているのかも謎だしな)。
ソロ・イリヤ・ギャビーのトリオがかわいくて(ヴィラン側すらも魅力的で)、愛しくて、やっぱりニコニコしてしまうばかりなんですよね……や、色々考察されてる方も多いので、そちらを参考にしていただくとして……。

いくらでも残酷にシリアスに出来る時代だったり、設定なんですよね。そこをあえて軽薄に痛快にしたところが良かったと思いました。アクション映画でもまったくエグい表現しませんしね。
でもちょいちょい気付けば「うっ」ってなる要素をちりばめてはいるんですよね。それは受け取りたい人が受け取ればいいのかな?でもイリヤのグラーク出身っていうのは、よくぞあそこを出てこんな良い子(たまにちゃぶ台返しマンになるけど)に育って;;とBBAは涙目ですよ。
ソロには暗かったり、空虚なところがあって、ギャビーは期せずして訪れた自由を手放さないしたたかさはあると思うし、三人とも癖はあると思うんですけど、イリヤが一番ピュアな気がしますね!
あ、ソロ担ですけど。
あとはすみません、二次創作で書きますね!(考察できるほど冷静に見てないんです)(開き直り)
あと、大好きなところはあれです!
ウェイバリーの命令してすぐにサンキューベリーマッチするところですwクローザーのブレンダ式のあれw
断られるとは思わないし、断らせないし、だけど慇懃なの!あれ大好きです!

で、まあ、後はほとんどの人が気にならないところだと思うんですが。
シャーロック・ホームズの時でも思ったんですけど、時代モノのセットが必要なのかよ?って思うほど正確だと思うんですよ!今回のベルリンなんかどうやって作ったんだよ!?って思うぐらい。ロンドンのセット+CGIだとは思うんですが、エンドロールを見る限り大規模でのCG頼りでもない感じなんですよね。
でもわざわざ地図を出してきただけのことはある、正確さだし、作り込みの正しさがあったと思います!(まあ、だから製作に時間かかるんだろうな……)

あと、これでもかというほどにカヴィル君を美しく撮ってくれてありがとうとお礼を言って、このとりとめもないお話を終わりにしようと思います。お顔、ボディライン、髪の毛、すべてに至るまで最新の注意を払ってくれていたと思います!
(ほんとはもうちょっとぽやんとした素のカヴィルくんが好きなんですけどね、それはそれで)

あれですね、軍人の家系のおヒューとカヴィル君があるある話してて、そこにアミハマが「??」ってやってたら楽しいな。
あと、野球の話して、他全員にぽかんとされて欲しい。

いや、ほんといい加減に終わります。
ではでは。

2016年年賀状企画

なんだかんだで毎年やっております!

コチラから受け付けておりますので、お気軽にどーぞ!ですv

冬コミに出ないのでリクエストも受付けております。デフォルメの絵になりますが、こんなんが見てみたい等ありましたら、お聞かせくださいませ!

※しばらく先頭に置いておきますね!