RPS-AU: Viggo Mortensen/Sean Bean -Valentine Day-

<MP24配布ペーパー:再録>

起き抜けに朝食の支度をするのは、苦ではない。腰のあたりに甘い疼痛を残したまま、緩慢な動きでメニューを考える。昨日はポトフの残りにポーチドエッグを入れたな。
今日は何にしよう。
遠くからシャワーの音が聞こえる。ショーンより少し後に起きたヴィゴが珍しく、良い子にシャワーを浴びているようだ。あれだけ汗をかいたならな、と昨日の夜と、明け方の情事を思い出し、ショーンはぺろりと唇を舐めた。
今日は、タルティーヌにしよう。
じんわりと熱が下半身に集まっていくのに任せながら、ショーンはバゲットを薄く切って皿の上に並べる。バターを少しだけレンジで温め、柔らかくなったところで粒が舌に触るぐらいに挽いた岩塩を混ぜ合わせる。それを二枚分のバゲットに塗り、薄くスライスしたラディッシュを敷き詰めた。
もう二枚分のバゲットには、フレッシュチーズとイチジクを重ねて並べ、からからに炒った胡桃をトッピング。それから最後にオリーブオイルを塗ったところにロースハム、オニオンスライスを盛りつけ、ブラックペッパーをふりかければ三種のタルティーヌの出来上がりだ。
冷蔵庫の中には昨日のうちに作っておいた、チョコレートのケーキが待機している。
そう、今日は愛のキューピッドが大はしゃぎする日、バレンタインデーだ。仕掛け人が商業的であったとしても、何らかのきっかけにする恋人同士は少なくない。
「……まあ、いまさら……バレンタインも何もないんだけどな……」
二人の場合は付き合いも長ければ、同居の期間もずいぶんと長い。こうして体に火照りをしっからいと残す、濃厚なセックスの時間も十分にある。倦怠期とは無縁だったが、こんな時は少しだけ困る。
水を飲んでも、収まらない。
太股と太股をすり寄せて、はあ……と、熱い吐息を漏らしても、当然と言うべきだろう、無駄なことだった。ぺろり、ともう一度唇をなめたショーンだったが、さすがに料理をしたばかりの手をスウェットの中に入れるのは憚られる。
それに、せっかくのバレンタイン・デーなのだ。我慢をする理由はどこにもない。
ショーンは、にんまりと好色な笑みを浮かべると、そのままバスルームへと向かった。汗をかいたのは自分も同じなのだから、責任をとってもらうのもいいだろう、そう思いながら。

***   ***   ***

「……こんなにして」
ヴィゴはにいっと口角を上げた、野性的な笑みを浮かべ、後ろからショーンの体を抱きしめる。そして、両のこめかみにキスをしながら、ショーンの緩く立ち上がったペニスを右手で弄んだ。軽く握り込んで前後させるだけで、ショーンの体はぶるりと震えた。
寒い?というヴィゴの問いかけにショーンは首を横にふり、熱い、と答えた。
「満点だ……」
うなじに唇を這わせ、時折軽く歯を立てる。手の平は肌をすべり、指先はペニスを弾く。すっかり熟れたようになっているショーンの体は少し意地の悪いヴィゴにあっという間に翻弄されてしまう。
「ん……いや……、あ、あ……ん」
少しだけ、と思っていたショーンも、すでに敏感になっていたせいもあり、すっかり煽られてしまった。ひざはがくがくと震えて崩れ落ちそうになるし、昨日の夜の時点で、かなりの刺激を与えられていた乳首はふっくらと触れてもいないのに立ち上がっていくのがわかる。
「はあっ……はあっ……、あ………!」
胸も、それからペニスも、何かにこすりつけたい、刺激を求めて身をよじるショーンにヴィゴはくすくす笑いをしながら、それを制する。
「……どっちが欲しい?」
臀部にはヴィゴの固さを取り戻したものが押し当てられている。
「あ…熱い……、ヴィゴ……あつい………」
冬だと言うのに、すっかり体を火照らせたショーンは譫言のようにそう言うと、ぐっと腰から下を後ろに突き出すような格好になる。なるほど、セクシーだな、とヴィゴは笑う。
起き抜けにファックして欲しくて身をすり寄せてこられて、待てが出来るほどまだまだ自分は枯れていないらしい。
「オーケイ、ダーリン。しっかり手をついて?」
ヴィゴはショーンの体をタイルの壁に押しつけるようにして、冷たい?と耳元で囁く。
「わ……わからないっ……っ」
あとで、一緒にバスタブの中で暖まろうと決めたヴィゴは、自身を二、三度こすりあげ、一気に後ろから熱くとろけそうになっているショーンの中へと、押し進めて行く。その熱さと締め付けに、下品な歓声を上げたくなるのをぐっとこらえ、両方の手でしっかりと腰を支える。
「あ……、ヴィゴ……ヴィゴ……っ!」
ゆっくりと抜き差しすると、ショーンが欲しかったものが届いたようで、頭を大きく振って快感を伝えてくる。濡れて束になったブロンドが跳ね、首筋の肌がぱっと赤く染まる。
少し肌が沈むような質感もいい。
ヴィゴはくつくつ喉の奥で笑いながら(最高のセックスは気持ちを明るくするものだ)、腰を前後に揺する。
「はあっ……はあっ………はあっ………」
熱い、熱すぎる固まりが埋め込まれている。ショーンはいつの頃からか、どちらのものとはわからないほど溶け合う感覚が当たり前になってしまっていた。ヴィゴのせいだ、と恨みがましく思っていたこともある。
今日のようにのんびりした朝ならいいけれど、彼の不在が寂しい夜もある。
おまえのせいだ、と言ったところでヴィゴを喜ばせるだけなのだけれど。
「ふっ…ん、ん……っ」
唇の間からこぼれる甘い響き。
ぎゅっと締め付けてはどろりととろけたようにからみつく、このままずっとつながっていたいと思わせるショーンの奥に届くよう、ヴィゴは少しずつ勢いをつけて突き上げる。体を抱え込むようにして、首筋に歯形をつけたのは「予防線」というよりも、もっとずっと単純な所有欲だ。
こんなにかわいい生き物を他の誰の目にも触れさせたくないという、子供じみた感情だ。
実際、言葉にすると軽蔑されてはいけないので。
ささやかなマーキングを残す。
「行くぞ……?」
ヴィゴは下から突き上げるように激しく腰を揺すった。柔らかな臀部に、腰骨をたたき付けるぐらいの勢いで。しかし、痛みはないのか、ショーンは甘い声と掠れた悪態(それすらも喜んでいるようにしか聞こえないご褒美だ)をつきながら、大きく身を震わせた。そして、喉が先ほどよりずっと大きくしなり、動きが止まる。
その瞬間、白濁が勢いよく発射されショーンのペニスが別の生き物のようにびくびくと震えた。そして言った通りヴィゴもたっぷりと愛を込めてショーンの中にたっぷりと、放ったのだ。

***   ***   ***

「……ハッピーバレンタイン」
ふわあ、と大きなあくびをしたショーンは半分だけ目を開けた状態で、ソファに沈み込んでいた。甘いだるさと、ほど良い疲れは何度もショーンをまどろみに誘う。
バゲットを囓っては、うとうと、囓ってはうとうとをくり返しているうちに、ヴィゴはチョコレートケーキの半分を平らげてしまったようだ。
俺のためのケーキだろう?と嬉しそうに歯を見せて笑うので、たぶんね、と曖昧に答えてやった。
そう、少し機嫌を悪くした顔がセクシーで好きなんだ。
鏡を見てみるといい。
ショーンは言葉にはしないまま、ふんわりと甘く口元をゆるめ、穏やかなスマイルとともに、またまどろみへと誘われていった。

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実は書き途中のAU設定から抜き出して
書いてみました。
お料理得意なショーンとそれを美味しく食べるヴィゴなのです。

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