Valentine SS 【John.H/Sean based on Before Until Dark】

2013 Valentine Request

いつもなら窓の外が真っ暗な頃にけたたましく鳴り響く目覚ましが鳴らなかった。
今はまだ目を閉じているけれど、瞼の奥で明るさを感じているし、頬や鼻の頭が冷たくないというのもいつもとは違う。夜は落としているはずのセントラルヒーティングが付けっ放しになっているようだ。
にゃあ、とプリンスが甘えた声で鳴いている、ということはもう夜が明けてからずいぶんと時間が経っているということだろう。この部屋で彼が遊ぶのは冬の場合朝の十時頃、と決まっている。
「……ジョン……?」
ショーンは目を閉じたまま、愛しい旦那様の名前を呼ぶ。今頃捜査会議も二つ目に入ってそうな時間だったけれど、呼ぶだけ呼んで見た。
しかし、もちろん返事はない。もしかするとあまりにうるさい目覚ましを彼が止めてしまっただけのことかも知れないけれど、何かがいつもと違うのだ。もがくように手を動かしていると、かさっとしたものに指先が触れる。
何かの紙、のようだ。
「んー?」
ショーンはいよいよ観念し、重たい瞼を上げた手に触れたものに目をやった。
「……お?」
赤い封筒。
あまりかわいくない猫のシールで封のされたそれは、たぶん、カードだ。
「あ!」
そうだ、忘れてた!とショーンは飛び起きて、シールを破らないように(破ったらかわいそうなことになりそうだったから)丁寧に封を開け、中のカードを取り出す。
「……ハッピー・バレンタイン!」
いつものそれほどきれいではない字で、少し長めのメッセージがそこには書かれていた。

やあ、にゃんこちゃん
今年も、愛の日ってやつがやってきた。

俺の分はいつもおまえさんが独り占めだよ。
ハッピーバレンタイン

これでも、長いのだ。ショーンがそこに書かれた文字数を数えて、大喜びするほど。ましてやバレンタインデーの当日の朝、カードを用意してくれるなんて奇跡と言ってもいいくらいかもしれない。
「ようやく起きたな、お寝坊さん」
どうしよう、どうしよう!と喜びと動揺がないまぜになっていたところに、いるはずがないと思っていたジョンからの声がかかった。
「ジョン……!」
「ああ、ジョンだが?」
「ど、どうして?」
「……どうもこうも……」
下手を踏むと愛が足りないとか大騒ぎするから、それなりに考えて演出してみた、と言うのをあえて説明するのもおかしな話だったし、ショーンが理解出来るかわからない、と踏んだジョンは言葉を濁し、肩をすくめる。
「え……?」
何か悪いこと?というような表情を見せるショーンに、ジョンは、ほら、と腕を広げて見せた。
「カードに書いたろう?」
行かないで、とでも言うようにすがりついてきたショーンのつむじのあたりにキスを一つ落としたジョンは、内緒ごとを話すような声音で囁く。
うん、と頷くショーン。
「いつもそうなんだが、まあ今日は特別にな?」
うん。
「携帯の電源も切ったし」
うん?
「ああ、そうとも」
「いいの……?」
本来オフというのはそういうものなのだけれど、仕事人間のジョンにおいて署からの連絡を一切断つということは滅多にない。つい最近癇癪を起こしたつもりもなかったから、どんな顔をして良いかわからないぐらい嬉しい。
「ああ、日頃の行いが認められた」
「嬉しい!」
むぎゅっと音がしそうなほど強く抱きつかれたジョンは小さく呻きながらも、どうにかこらえた。
サプライズはもう一つ。
「それで、だ。ショーン」
「ん?」
「焼きたてパンケーキ、食べたくないか?」
ぱちくり、と瞬きをしたかわいい恋人がぱあっと満面の笑みになるまでを見届けた後、そのふっくらとした頬にキスをした。
「愛してる、ジョン!」
「ああ、俺もだ、にゃんこちゃん」

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一つ?くらいは軽いテイストでお送りしようと
いつもの馬鹿っぷるを連れてきましたv
すごいよね、たぶんもうにゃんこちゃんだって
書き始めて7,8年経ってるから、その、ごにょごにょ……

アラフォー?www

うそうそ、永遠の28歳です(それでも痛い)

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