THIS MEANS WAR  FDR/Tuck

120819 発行 『Knocker’s #9 Re-MIX』 より 再録

※出来上がってます


「なあ、タック?」
FDRの目がこんな風に輝いているときはろくなことがない。
「……なに。」
タックはそれがわかっていたので、気のない返事をするに留めたのだけれど、案の定FDRは聞き耳を持たない。
「やっぱり、俺はすごい損をしてるってこと、気づいちまった。」
「はあ。」
「タック!タック!」
聞いて、ねえ、聞いて。俺の話を聞いて。これがFDRの常で、タックはそれにもう何年も付き合ってきたし、多分これからもそうなるのだろうけれど、時折疲れも感じる。
「俺こそ、ようやく気がついたよ。」
だから嫌味の一つでも言おうとしたのだけれど、すぐに遮られる。
「俺が先。」
「……わかった、何だよ。」
「タック、黙って。」
ちっ、と舌打ちをした後、それでもタックはFDRの言う通りに口を噤んだ。
「……。」
するとFDRの人差し指が、タックの唇におしあてられた。確かに男性としてはぽってりとした厚みはあったけれど、まさか。
「何で気づかなかったんだろ……キスも、何度もしてるのに。」
やめろ、というよるにタックがFDRの手を払おうとするが、もう片方の手でしっかり防がれてしまう。
噛みつこうと口を開こうとすると、
「ん!」
唇を、奪われてしまう。プレイボーイを極めた男だから、このあたりの技は電光石火と言ってもいい。畜生、と歯がゆく思ってもこういう関係になってしまえば、本気で突き飛ばすことなどできないのが、タックの弱さであり、良いところなのだ。

だから、言ってやりたかったんだ。
こんな風になるんじゃなかった、後悔している、と。

「……今度、このお口でして欲しいんだ。タック、な?いいだろ?」
こんな目眩がするような下品なことを言って、プリンスチャーミングのスマイルを浮かべる傲慢男に言ってやりたいと思っていたのだけれど。
「……食いちぎってやる……。」
「またまた、そんなこと言って。」
絶対よくしてやるから。
底抜けに明るい、こちらのことを欠片も疑っていない、この青い目を見るとどうでもよくなってしまうから、困る。
まだ早いとは思うけれど、近いうちには願いを叶えてしまいそうなのが怖い。
はあ。
まったく。
「惚れた弱みってやつだよな!」
「おまえが言うな!」
ははは、と明るい笑い声に救われることも多いので、頭にげんこつを一つ落とすだけに今日は留めておいた。しばらく膨れ面をしておけば、何だかやけにうまいものを差し入れてくるのがわかっているから。
まあ、今日のところはそれでチャラにしてやるよ。
「タック、タック!」
「何だ?」
「愛してるぞ?」
はあーっと大きなため息をついてから、タックはこう返した。
「ああ、俺もだ。」
どうも甘やかしすぎだという反省は、もちろん、後回しにして。

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