このささやかな眠り/マイケル・ナーヴァ/創元推理文庫

いったい人間ってやつは、いつになったら、愛する人間にとって本当に必要な行動を取れるようになるんだろうね

これは物語の終盤、主人公の現友人(元恋人)の弁護士が言う台詞です。ここにズガンとやられてしまいました。うおおお。

オススメ頂いた「弁護士ヘンリー・リオス」シリーズの第一弾、一気に読み終えました!
作者自身が法曹家で詩の勉強してたってこともあり、中でも詩の引用が見られたり、登場人物の趣のある台詞一つ一つをとってもハードボイルドミステリというより、ちょっと文学的な感じがしました。作者の投影なのかもなーと思いました、後書きを読んで。
えー とミステリなんで、おおまかなストーリー紹介になってしまうのですが、こちらのヘンリーは弁護士なんですがヒスパニックでゲイ、というマイノリティでその ためか仕事のスタンスにこだわりが強すぎる傾向があります。はじめは公選弁護人をやっているのですが、彼はこの物語がはじまる前に大きな挫折を経験してい て……という流れなのですが、ミステリの軸とは別にヘンリーの「アイデンティティの確立、それに向ける葛藤」というのがあるように思えました。それがまた 好みで……。ダークヒーローでもなく、正義を口にするわりに爽やかではない、それでもひどく人間的なヘンリーはとっつきにくいけどどこか芯で人を信用させ る力があるようです。現に絶対絶命に追い込まれながらも彼には手を貸してくれる人がいました。独立独歩で孤独な戦い、を好む中にそういうのがあると読者は ほっとします。
んー、でもじんわりとした哀愁がずーんと来たりして、テリ・ホワイトさんの作品のように「それっぽい」というわけではなく、ずばりゲイでゲイカルチャーについてもあれこれ触れられているのですが、むしろさらりとしてるよーな。
銃を撃ち合うわけでもなく、とんでもトリックがあるわけではないのですが、丹念に法律と正義だけを武器にひそかに戦いを挑むヘンリー。そこにあるのもやっぱり哀愁。でも好みなんだなあ~。
昔の彼とキスをするシーンもまたお洒落で、せつなくて。

ところで巻末に訳者の方の後書きがあって、ゲイの探偵のシリーズについて触れてるんですが、中でびっくり仰天したものが。

ジョン・プレストンのアレックス・ケイン・シリーズ。

ジョン・プレストン!?リリリリリリベリオン!?とびっくりしました。同姓同名なだけで、作者さんの方の名前なんで慌てるまでもないのですが(笑)未訳だそうでさすがに読めそうにないんですけど、どなたかご存知の方いらっしゃいますかねえー。
そ れで、というわけでは全然なくて最初の数ページを読んだところでキャストを当てるとしたらヘンリーはクリスチャン・ベールがいいかもしれない、と思いまし た。ヒスパニックではないのですが、イメージがぴた、と合うような気がして………ど、どうかな。34歳っていう年齢も近いし。

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